これで、おしまい

今日のおすすめ本。

2016年1月17日はこちらです。


『愛人 ラマン』

マルグリット・デュラス著 清水徹訳 河出書房新社


 ソフト帽の娘は、大河の泥のような光のなかで、ただひとり渡し船

甲板に立ち、手すりに肘をついている。男物の帽子が情景全体を薄い紫檀色に

染める。色彩はそれだけだ。靄をとおして大河に照りつける陽光のなかで

両岸は消え、河はまるで地平線とつながっているように見える。河は音もなく

流れている。河は音をまったくたてない。身体のなかを流れる血液のように。

水の外には風はない。情景内でただひとつ音を立てている渡し船のモーター、

駆動棒が鋳物製のがたぴしの古いモーター。ときどき、わずかに風に乗って、

ひとの声。それから、犬の啼き声、いたるところから聞えてくる、靄の奥から、

あらゆる村から。

(中略)

 自分の少女時代に関連するわたしの本のいろいろな物語のなかで、

何を語ることを避けたか、何を語ったか、突然わからなくなる、

みんなが母に抱いていた愛情のことは語ったと思うが、母に対して憎しみを

抱いていたことは、そう、それに憎しみも抱いていたこと、それから家族の者

がたがいに愛情を抱いていたことは、そう、それに憎しみも、恐ろしいほどの

憎しみもたがいに抱いていたのだが、家族みんなにかかわったあの破産と死の

物語のなかで、さあ、果たしてそれを語っただろうか。あれは愛情を

感じていようと憎しみを感じていようと、いずれにせよこの家族の物語

だったのだけれど、それはいまだに、およそわたしの理解力を越えている。

わたしはいまだに接近不能なのだ。わたしの肉の一番深いところにひそんで、

あの物語はまるで生まれたての赤ん坊のように、外の世界が眼に入って

こないのだ。その入口のところから沈黙がはじまる。そこで起っていること。

それはまさしく沈黙なのだ。

(本文より)


自分の少女時代。

少女時代。




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