Shan Shan

今日のおすすめ本。

2015年10月27日はこちらです。


『その最後の世界』

石川達三著 新潮文庫


 流浪には流浪の面白さがある。殊に若いうちは流浪の魅力にひかれる

こともある。彼自身にも二十代の頃には、そういう心のロマンに誘惑を

感じた時代もあった。生活の固定した家庭夫人にくらべて、展子の生き方も

若いうちには、たしかに魅力は有るに違いない。しかし流浪には流浪の

限界がある。一定の年齢に達したときには、いかなる生物もその流浪を

やめて生活の定着を求め、そこで次の時代を生きる子孫を育てるという

地道な作業に取り組んで行くのだ。

 生き甲斐・・・一体生き甲斐とは何だ。彼はこの年になるまで本気で

そんなものを考えたことはなかった。しかし現代の若者たちはしきりに

生き甲斐を口にする。それは彼等が何かしら生き甲斐と言うものを

見失っているのではないか。展子にしてもそうだ。結婚にも家庭生活にも

育児にも、彼女は生き甲斐を感じることができない。そしてしきりに

生き甲斐を外に捜している。流動する社会の中に、変転きわまりない

社会の中に、あの古い物語の中の青い鳥を探す子供たちのように、

彼女は生き甲斐を探して流浪する。しかしチルチルとミチルとは、

疲れ果てて帰って来たとき、思いがけなく自分の家の自分の加護の中に

青い鳥を見つけ出した。あれと同じように彼女もまた流浪の末に、

疲れ果てて自分の家に帰って行くよりほか、本当の生き甲斐を見出す

場所はないのではないだろうか。・・・。

(本文より)


この作品の単行本が刊行されたのは昭和四十九年。

ここで“現代の若者”として語られている展子も、

いまは五十代後半くらいでしょうか。

彼女が現代の若者になにを感じているのか。

聞いてみたいところではあります。


こちらは現在絶版となっております。

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