帝都幻談

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今日のおすすめ本。

2015年4月3日はこちらです。


『異都発掘【新東京物語】』

荒俣宏著 集英社文庫


 とにかくここ数年、筆者は「東京がなくなる」という強迫観念に

とらわれてきた。それは東京の名所や「東京らしさ」の消滅という

悠長なものではない。東京の実体がなくなるのだ。東京路上博物学

路上観察学会が、東京のあちこちに今も残された古くさいもの、

珍しいもの、おかしなものを、あれだけ発掘してくれても、なぜか

筆者の強迫観念が消えないのは、そのためにちがいない。

 で、最近やっと苛立ちの原因がはっきりした。東京の“実体“消滅は

今や旧に倍する速度で進行中なのである。

(中略)

 しかしこれでやっと、この本を「不気味である」と規定したことの

真意を明らかにできるところまできた。消えた東京を発掘するのに

いちばん手軽な方法は、東京の亡霊をさがすことなのだ。

 では、亡霊はどこに隠れているのか?

 東京の裂け目、に。

 地表を覆いつくして澄まし顔をしている新しい東京の下には、

「消えた」あるいは「消された」東京が累々と積み重ねられ階層を

形成している。ふつう、これらの部分は外部から見るかぎり、

存在しないも同然のものだ。捨てられ、葬りさられたものが復活する

ためには、上層を覆った時代の殻を破らなければならない。

そして、硬質な殻で封じこめられた表面を細かにたどる者だけが、

ごく局所的に穿たれた裂け目を発見する。この裂け目から、

東京の亡霊は夜ごと、弱々しく出現するのだ。

(本文より)


こちらは現在絶版となっております。

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