愛は血を流して横たわる

高瀬川沿いの桜はいまが見頃。

今年は咲き始めてからが特に早かったように思います。





なにやら明日からまた雲行きがあやしいような。

なるだけ長く咲き続けてほしいものです。


今日のおすすめ本。

2015年3月31日はこちらです。


『赤い右手』

ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ著 夏来健次


 彼女の白い衣装がヘッドライトの光のなかに入ってきたのは、岩肌の迫る

急なカーブを曲がったときだった。コールリッジの詩にでも出てきそうな

この世ならぬ姿で、わたしに向かって助けを求めるしぐさをしていた。

 蒼白な顔のなかで、黒い瞳を宿す眼がやけに大きかった。頬にはすり傷がつき、

泥で汚れていて、黒い髪には落ち葉がまとわりついていた。コートには緑色や

茶色の野草の種がいっぱいくっついていた。白いパンプスは泥まみれのうえに

石で傷がついていて、しかも片方のヒールがとれていた。

 手にはなにも持っていなかった。ハンドバッグさえ──フィアンセと二人で車を

おりたとき、ハンドバッグもほかの持ち物もみな車のなかに置いてきたのだという。

後刻彼らの車がスワンプ・ロードのはずれで発見されることになるが、そのときには

たしかに荷物が車内にそのまま残っていた。ただハネムーンへの出発前に銀行で

フィアンセが彼女にくれたという五十ドル札、および一緒にしておいた小銭は、

そっくり抜きとられていた。

 さまよい歩いたり走ったりしてきたせいか息は荒く、体は震えていた。

わたしは車を止めた。

(本文より)



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日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。