今日のおすすめ本。
2014年7月30日はこちらです。
『サイコ・ミステリー傑作選』
江戸川乱歩著 木々高太郎著 土屋隆夫著 森村誠一著 多岐川恭著 逢坂剛著
河出文庫刊
「ええ、兄が、お酒を飲みに連れて行ってくれるというので・・・・・・。
よろしかったら、塩田さんもいかが？」
「お兄さん？お兄さんとおっしゃると？」
私は静子の顔を見た。
「いやだ。兄は兄だわ」（中略）
「つまり、水島保のことなんですか？あなたのいうお兄さんとは・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
静子は笑って、うなずいた。
その笑顔を見た瞬間、私は、はっとした。一度、暗闇で猫につまずいたことが
あったが、そのとき、背筋に走った感覚と似ている。
静子の笑いが、異様だったのである。彼女の感情とはアンバランスな、
顔だけの笑い、或いは、ただ顔面筋肉の一部が緩んで、自然に笑っている
格好になったーと言った印象であった。
「だって、その水島なら十二年も前に亡くなったじゃないですか？」
（「狂女の微笑」本文より）
こちらは初版本では現在絶版となっております。
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