走れウサギ

今日のおすすめ本。

2014年2月21日はこちらです。


『農場』

ジョン・アップダイク著 河野一郎訳 河出書房新社


 ペギーが訊いた、「で、ご主人は何を欲しがっておられましたの?」

 母は、遠い鳥の声をあてようとでもするように首をかしげた。

 ペギーの胸の中では実に明解な問いであり、彼女はこの明解さを

共有しようとした。「お母様は何をあげようとなさいましたの?

ジョーイと農場を下さったご主人に、お母様からは何を?」

ていねいな表現だったが、瞼に都会の緑色の影を消えやらずに残している

ペギーの目は、危険なほど疲れていた。

 ぼくの心臓は重く打っていた。ずきずきと疼く指先が、ワイングラスの

柄の冷たい芯のまわりに腫れぼったく感じられた。目と口から魂が逆流し、

ふたたび暗闇に—彼女のおかげがなければ、ぼくも生まれずしてその中に

埋もれていた暗闇に—帰る母の沈黙は、いぜんとして怖ろしかった。

「そりゃ、あの人の自由をですよ!」

(本文より)


こちらは現在絶版となっております。

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