虹と睡蓮

今日のおすすめ本。

2014年1月18日はこちらです。


『影絵の世界』

埴谷雄高著 筑摩書房


 私は結核に固有なゆうぐれの陰熱の不快さのなかに

いわば存在自体がもっている根源的な不快感を覚えたが、

他方、深夜、熱がひいたあとの澄みきった透明な精神のなかに

もはや眠れぬ目を見ひらいて、果てもない乱読にふける習慣が

ついていたのであった。(中略)

 従って、私は一方で結核のなかの暗いニヒリズムを多様なかたちで

飼いならしながら、他方でまた生の多様なかたちをいわば

ロマンティズムの最も充実した多彩な姿でながめていたのである。

死と生、暗と明は、結核をわずらっている少年である私が

青年に移りゆくとき無理やりにでもたずさえてゆかねばならぬ

不可欠の通行証なのであった。

(本文より)


こちらは現在絶版となっております。

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貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。