今日のおすすめ本。
2016年2月29日はこちらです。
『ベルリン・ゲーム』
ソ連人はオペラ座と王宮と官庁の建物と最悪のスラムのいくつかを手に入れた。
西側諸国は動物園と公園と百貨店とナイトクラブとグリューネバルトの金持ちの
別荘を獲得した。そして両地区をシシカバブの焼き串のようにつらぬいて、
東西軸がある。
かつて全ヨーロッパを制覇すべく、ドイツ軍の指揮をとっていた総統大本営が
あったベンドラーブロックは、今では化粧品会社のオフィスビルになっていた。
ベンドラー通りは改名されていた。そのあたりのものはなにもかも、ただ
見ただけではわからない過去を秘めていた。そのことはわたしの気に入った。
黄色い煉瓦づくりの正面に三ヵ所、大きなドアのついた出入口がある
アンハルター駅は、かつてウィーンとドイツ南東部への豪華な急行列車の
発着場だった。しかし、それはもはや忙しいターミナルではなかった。
がらんとしたその建物の敷地は、久しい以前から雑草と野の花がはびこるままに
打ち捨てられていた。
(中略)
そろそろ暗くなりかかっていて、ベルナーは立ち止まって街路を見透かした。
落書きだらけの高い壁ごしに、青緑色の強烈な反射光がさしていて、ほかの都市の
通行人なら、フットボールのナイトゲームをやる大競技場が近くにあって、
照明灯が点灯されたのだろうと思うにちがいなかった。だが、その壁の向こうに
あるのはポツダム広場の広びろとした空間だった。かつてはヨーロッパでもっとも
激しい交通のかなめだったその場所は、今ではこうこうたる照明をあびてひっそりと
静まり、鉄条網と地雷と銃座で固められた“死の無人地帯”となり変わっていた。
(本文より)
こちらは現在絶版となっております。
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日々のおすすめ本から、
貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。
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『Tenacity Blues Diary -Fragments of Life with The Birthday-』
新保勇樹著 ワニマガジン社刊
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