愛しのクレメンタイン

今日のおすすめ本。

2015年5月9日はこちらです。


『真夜中の死線』

アンドリュー・クラヴァン著 芹澤恵訳 創元推理文庫


 眼が醒めてからも、フランクはしばらくのあいだ、壁のほうを向いて横になったまま

姿勢を変えず、眼もつぶったままでいた。気持ちが昂り、思わず夢の名残にしがみついた。

(中略)

それでも、未練たらしくなけなしの希望にすがって、寝返りを打ったが・・・・・・

戸口の鉄格子が見えただけだった。鉄格子の向こう側では、看守が細長いデスクにつき、

タイプライターで所定の記録事項を打っていた 午前六時二十一分、囚人起床。

デスクに屈み込んだ看守の頭のうえのほう、背後の壁の高い位置に時計が掛かっていた。

フランク・ビーチャムが車輪のついた寝台にくくりつけられ、処刑室に運びこまれたのち、

致死量注射により死刑に処せられるまで、あと十七時間と四十分だった。

(中略)

 フランクは顔をあげ、息を深く吸い込んだ。彼は身長が六フィート近くあり、痩せた

筋肉質の身体を、刑務所支給の緑色の緩やかなズボンと丸首シャツに包んでいた。

シャツの胸の部分には、死刑を意味するCPの文字と133という番号がステンシルで

刷り込まれていた。茶色の篷髪は前髪が不揃いに伸び、眼のうえに垂れかかっていた。

顔立ちはどちらかと言えば細面で、皺が目立ち、両目のあいだが狭く、落ち窪んで

悲しそうな茶色の眼をしている。彼は親指で唇をこすり、湿りを拭った。

(中略)

 今日は、朝の祈りを通じて、力を求めた。自分のためではなく、妻のポニーのために、

そして幼い娘のために。今こそ、今日という最後の日にこそ、彼らの嘆きに御心を

注めてほしいと訴え、彼らに別れを告げる力をこそこの身に授けてくれるように祈った。

(本文より)


クリント・イーストウッド監督・主演作である、

トゥルー・クライム』の原作本です。


こちらは初版本で現在絶版となっております。

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日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。


The Birthday NEW SINGLE『I KNOW』『MOTHER』

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