三寒四温


暖かくなったり寒くなったり、まさに一進一退の攻防。

そのうえ花粉軍団遊撃隊も本格的に侵攻を開始しやがりました。

毎年のことなれど、ヤツらの奇襲は熾烈をきわめます。


体調を崩しやすい時節柄。

みなさんくれぐれもご自愛くださいませ。



今日のおすすめ本。

2015年3月8日はこちらです。


『赤い花・信号』

ガルシン著 小沼文彦訳 旺文社文庫


 ふたりのはいっていった食堂では夕食の用意がもうすっかりできていた。

つめたいローストビーフがもも色の山をなして盛りあがっていた。缶詰の缶が

色とりどりの英語の文字や鮮やかな絵でいろどられて斑色になって積まれていた。

酒びんがたくさん食卓の上にたかだかと並んでいる。ふたりの友だちは一ぱいずつ

ウオトカを飲み干すと夕食にとりかかった。クドゥリャーシェフはゆっくりと

やすみやすみ食べた。彼はまったくその仕事に没頭してしまったのである。

 ヴァシーリイ・ペトローヴィッチは、食べては考え、考えてはまた食べした。

彼の心はすっかり乱れてしまって、いったいどうしたらいいのかまったく見当も

つかないありさまだった。彼のとった信念によれば、このふるい友人の家から

一刻も早く姿を消し、今後は彼に見向きもしてはならないのであった。

『現にこの切れはしだって──盗んだものじゃないか』──肉切れを口に運び、

親切な主人がつぎたしてくれたぶどう酒をすすりながら彼は考えるのだった。

『それなのにおれ自身のしていることはいったいどうだ。卑劣じゃないか?』

(「めぐりあい」本文より)



こちらは現在絶版となっております。

信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせくださいませ。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。